★2022年ムロオ関西大学ラグビーAリーグ第5節。摂南大戦。
11月13日(日)。午前11時45分キックオフ。雨/無風。神戸ユニバー記念競技場(兵庫県)。
最終スコア=18-24(前半8-10)。2T1G2PG×4T2G。
※関大は5節終了段階で0勝5敗。勝ち点2の8位。
関大の今季初の関西リーグ白星は雨に流されて行った。
後半25分、SO池澤佑尽が短いパントを上げた。ライン裏でCTB澤口飛翔が捕球。そのままインゴールに飛び込んだ。
池澤のゴールキックも決まり18-17。PGの先制を除き、この日初めて摂南大をリードする。紫の小旗を打ち振られる応援席は一気に盛り上がった。
しかし、その後、摂南大自慢の外国人留学生、CTBアミニアシ・ショーにトライラインを超えられる。リードはわずか5分間。この直前のスクラムで摂南大にアドバンテージが発生していた。関大は辛抱しきれず首を抜く。落胆したところを一気に突かれた。
関大にはラスト1プレーでチャンスはあった。ペナルティーキックからのラインアウトを得る。ところが、投入されたボールは抜けてしまう。摂南大はこのボールを得て、外に蹴り出す。その前にも同じミスがあった。
最終スコアは18-24。リーグ戦4連敗同士による対決で勝てなかった。7点差以内の負けによる勝ち点1は手に入れたが、総計は2。前節の7位から最下位8位に沈んだ。シーズン前の目標、大学選手権出場もなくなった。
関大はこの日、雨に泣いた。運がなかった。ボールも天然芝も滑る。持ち前の展開力は削られてしまう。
雨の日の戦い方は基本的に3点ある。
①できるだけ長いパスやラインアウトのスローイングを使わない。
②キックを増やす。
③FW中心で攻める。
今のボールはゴムになり、細かい突起がついて投げやすくなった。それでも晴れの時とは比べものにならないほどスリップする。40年ほど前、ゴム製が出る前は牛革のボールだった。これだと雨を吸って強烈に重くなる。自然、パスの距離は限定される。
PG成功で11-17と追い上げた後半12分、飛ばしパスがノックオン。後半、早い時間帯での反撃ムードは潰える。BKの選手はラインの距離を「心もち短くしていました」と答えたが、それでもミスは起る。また、最後のラインアウトも、ロングまでとはいかないまでも長めのスローイングだった。
雨用タイヤがあるように、ラインも雨用に短く、その分、深くしないといけない。深ければ、お手玉をしても合わせられるポイントは残る。ラインアウトもできるだけ前で合わせる。人数を減らし、前後への動きやボール投入者と捕球者とのタイミングでマイボールを確保する。それを練習する。
キックの多用は、ミスを少なくするためである。雨でボールは手につきにくい。この試合、関大もハイパントなどで前進を図った。
ただ、蹴り合いになった時のキッカーは池澤ひとり。逆に摂南大はSO大津直人、FB前薗斗真と2人を備える。しかも、利き足は右と左。グラウンドの横幅70メートルを摂南大は2人、関大は1人で守らなければならない。池澤にかかる負担は大きかった。
雨の日は普段以上にキック合戦になる。キッカーは2枚ほしい。逆に言えば、キックができれば、雨の日は特に公式戦出場の機会は増える。補欠の人間はそこを磨きたい。
そして、雨の日はFWの出番が多くなる。パスを減らしながら、ボール保持しなければならないからである。前8人によるパスは手渡し、あるいはきわめて短いものになる。
摂南大はNO8ヴィリアミ・ルトゥア・アホフォノ、LOヴェティ・トゥポウ、前半7分にトライを挙げたFL森山迅都らラインブレイクができる選手がいた。関大で対抗できるのはNO8池原自恩くらいか。ボールを散らせればよいが、それが出来ない雨の時は素のFW力が表に現れる。
この試合も落胆の結果になったが、良化している部分がなかったわけではない。
狙うべきところでPGを選択した。前半4分は3-0と先制となり、後半10分は11-17と1本のトライとゴールキックで逆転できる位置につけた。この時、1年生FBの遠藤亮真はさかんにゴールポストを示し、タッチラインアウトからのトライではない、ということをアピールした。ラインアウトをとれば、スローイングや捕球でミスが起こる可能性がある。トライ数が2対4だったことを考え合わせれば、この6点は大きい。
3人の外国人留学生対策も、決勝トライこそ奪われたものの、それなりにはできていた。走り出しを狙う、ということである。
「外国人留学生は動き出したら止まらない。できるだけ間合いをつめてタックルする」
記虎敏和の言葉である。記虎は2000年初め、啓光学園(現・常翔啓光)を率いて、高校全国大会4連覇を達成した。ライバルだった正智深谷には外国人留学生たちがいた。
劣勢が予想されたスクラムも、ダイレクトフッキングで池原がボールを拾い、BKに展開する形を見せた。できるだけスクラムに時間をかけず、体力の消耗を防ぐ。SHがそのボールを拾い、飛びながら投げるダイビングパスという手もある。半世紀前の日本ラグビーでは普通の光景だった。
最後に小さいことだが、書き添えたい。関大は大事なシーンで、ゴールキックのチャージに行かなかった。インゴールから飛び出さなかった。後半30分、決勝トライを奪われた後、円陣を組んだままだった。
再逆転に向け、意思統一を図るのは必要だ。しかし、それは短い言葉、指示でよい。ゴールキックを当てて妨げたら、その選手はチームに2点をもたらす、あるいは防いだことになる。トライを獲られたからといって、諦めてはダメだ。悪あがきをしないといけない。
この試合なら、スコアは18-22。ゴールキックに頼らず、トライのみで勝ち切ることができた。勝てないチームはそういう細かいことを積み上げていかないといけない。3点のPG選択もまたしかり。得点の可能性を高める。その連続が白星を引き寄せるのである。
◇摂南大戦先発メンバー
1宮内慶大(東福岡②)
2垣本大斗(石見智翠館③)
3細矢一颯(関大北陽③)
4中薗拓海(関大北陽③)
5福島蒼(大産大附④)
6奥平一磨呂(東海大仰星①)
7末長武尊(東福岡④)
8池原自恩(関大一❹)
9溝渕元気(大産大附③)
10池澤佑尽(東福岡③)
11大西俊一朗(関大北陽④)
12藤原悠(大阪桐蔭④)
13澤口飛翔(御所実③)
14三宅怜(関大北陽④)
15遠藤亮真(東福岡①)
◇入替 後半23分=垣本→今井虎太郎(尾道④)、末長→岩崎友哉(関大北陽③)。同31分=奥平→中村豪(常翔学園①)※白抜き数字は主将。
(文責:鎮勝也)
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